みんなのブログポータル JUGEM 彼女と二つのナイト | 蒼の庭園
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彼女と二つのナイト




「……ぷっ、なにこんなところで寝てるの……君は」

「わうー……?」

 いつの間にか喫茶店の入り口で寝てしまったロックは、あの女性の声で目を覚ました。辺りはすっかり暗くなっていて人通りも少ない。

「もしかして私を待ってたの?」

 女性はロックの頭に手を伸ばしそっと撫でた。

 




「わうー」

「あはは、そっか。でも、君……飼い主のところに戻らなくて良いの?」

 その言葉にロックは俯き情けない声をあげる。

「あれ、もしかして家出してきちゃったの?」





「わ、わう……」

 言いにくそうに顔を背けながらロックは答える。

「そっか、それなら仕方ないね。一晩だけ、うちにおいで。そのかわり……ちゃんと明日になったら飼い主のところに戻りなさいよ?」

「……わう」

 ロックの答えに女性は笑顔を見せ、立ち上がると「おいで」と言って歩き出した。



・・・・・






 夜の平原を一人と一匹が歩く、仲良さそうに並びながら。夜空に浮かぶ月はそんな二人を優しく見守るように道を照らしていた。

「ぐるる……!」

「どうかしたの?」

 不意に足を止め、唸り声を上げ始めたロックに女性も足を止めた。

「ぐる……、ぐるる!」

 ロックの視線は平原の先、夜の闇に隠された奥へ向けられている。

 





「……やれやれバレてしまいましたか」

 

 冷たく低い声が静まり返った夜の平原に響く。声に次いで乾いた靴音が響き、闇の奥から長身痩躯の男が姿を現した。

「……グルルッ!」

 その男へロックは明確な敵意を向け、牙を剥き出しにして唸り続ける。けれど、男はそんなロックを一瞥するだけで驚きもせず女性へ近付いてくる。






「あ、あなたは誰ですか……!」

 女性の言葉に男は足を止める。そして、顎に手をあて「これは失敬」と恭しく頭を下げる。

「私は『名も無き夜』と言います。あ、ご安心を……ただの魔法使いですので」






「いったい何の用……っ」

 女性の声を遮ったのは男の手だった。口を手で押さえられた女性は唐突に意識を失い、膝から崩れ落ちる。その様子を見たロックは唸り声と呼ぶにはやや激しすぎる声を上げながら男へ飛び掛った。





「おっと、君では騎士(ナイト)にはなれないよ」

 素早い動きで飛び掛ってきたロックを男はゆっくりと右手で払い除ける。それはとても優雅なものだった。だが……






「……ぐるっ!?」

 ロックはその男の腕に払い除けられただけにも関わらず、五メートルほど吹き飛んだ。地面に叩きつけられ、転がりながら平原へ横たわった。






「それでは行きましょうか、お姫様」

 意識を失い横たわる女性をそっと抱きかかえ、男は笑いを押し殺すような声を漏らし、闇に溶けるようにして消えていった。

「……くぅー……ん」



続く
author:ラクトキャスター, category:彼女と二つのナイト(頂き物), 00:00
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